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スプリングセミナーで高江洲義和先生(琉球大学精神病態医学講座教授)にご講演いただきました

 当教室では2024年度より「福岡大学医学部精神医学教室スプリングセミナー」を開催し、学内外医局員や大学病院内スタッフが精神医学を学ぶ機会を設けています。 

 9月22日には学外講師として琉球大学精神病態医学講座教授であられる高江洲義和教授をお迎えし、「睡眠覚醒リズムに着目した双極性障害の診断と治療」と題してご講演をいただきました。

 高江洲先生は、双極性障害の病態の背景にある概日リズム(体内時計)の異常に注目し、気分変動と睡眠・覚醒リズムの関係を多角的な視点から研究されており、その成果と臨床応用の実際をわかりやすくご紹介くださいました。

 講演では、双極性障害の患者さんでは、躁やうつといった気分エピソードが落ち着いた寛解期にも睡眠リズムの乱れが残存していることが少なくない点が強調されました。こうしたリズムの乱れを早期に捉えることが、再発予防や治療反応の個別化につながるのではないかというお話は非常に印象的でした。

 また、先生は臨床での実践例として、睡眠記録表の活用やスマートウォッチによる睡眠・活動リズムの可視化を紹介されました。これにより、患者さん一人ひとりの睡眠のパターンを把握し、リズムの特徴や崩れやすいタイミングを共有しながら、個別の介入(起床・就寝時刻の調整、光曝露の工夫、日中活動のリズム化など)を検討していくことが重要であると述べられていました。

 私自身も、臨床の中で「睡眠は取れているようで実際は質が悪い」「昼夜逆転が再燃の前兆だった」といったケースにしばしば出会います。先生のご講演を通じて、単に“眠れているかどうか”ではなく、“どのように眠り、どのように目覚めているか”という睡眠の構造を丁寧に把握することの重要性を改めて実感しました。

 今後は、患者さんと一緒に睡眠記録表をつけたり、スマートウォッチのデータを共有したりしながら、それぞれの生活リズムの特徴を可視化し、治療や支援のヒントにつなげていきたいと感じました。

 高江洲先生、このたびは大変貴重で示唆に富むご講演をありがとうございました。

(文責:安松 聖滉)

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